2005.09.02
牛久大仏
そのあまりの巨大さは、恭しさとか慈しみとかいうものをはるかに通り越していた。
たたきつける雨風を赤銅色の体に受けながら、じっとどこかを凝視している。
そこに感じるものは畏怖というよりも、はっきり言って、ただの恐怖だった。

「でけぇー。恐ぇーよー。ぶるぶる。」とごん太の後ろに隠れながら、少しずつ大仏に接近する。
大仏の足下に来ると『ここから見上げると大迫力です。』なんてふざけた看板が立っている。
「早う見ようぜ。いくで。せーの。」とごん太のかけ声で上を向くと、

どどーん
うーんやっぱりでかい。なんかくらくらする…。
でもせっかくだから写真を撮らねばと思い、傘を持って悪戦苦闘している僕を横目に、ごん太は大仏背後の胎内入り口にすたすた進む。
えー。待ってくれよー。
巨大仏の存在を知ったのはだいぶ前のことだ。
昼休みに市民図書館にぶらぶらと行って、「晴れた日は巨大仏を見に」という本を借りた。
中身はどうってことなかったけど、日本に40mを越す大仏・観音があって、全国各地に20体近くあるということを知ってびっくりした。
奈良の大仏はたったの14m。
牛久の大仏は120m。送電線の鉄塔ばりにでかい。

ところで、僕はでかいものが恐い。巨大人工物恐怖症である。
鉄塔とかトンネルとか瀬戸大橋とか立体交差とか観覧車とかカルポートとかをみると、なんか腰のあたりがぞいぞいする。
こんなものが存在していていいのかぁ?、と思う。
だから当然巨大仏も恐い。
にもかかわらず、こんな所までやってきた。
まあ、確たる理由なんてあるわけない。なんとなくである。

(はるかかなたに何かが現れる)
しいて言えば、120mもある仏像なんていうわけのわからないものが、本当に存在しているのかどうか確かめたかったからかな。恐いもの見たさの好奇心だ。
さて、僕が借りた本は「晴れた日は巨大仏を見に」のはずだ。
でも、浄土真宗東本願寺牛久アケィディアに僕らがやってきた8月25日は、関東地方に台風11号、その名も「マーワー」が接近し、テレビのニュースは台風一色の時だった。
そういえば、去年ディズニーシーに来たときにも台風がやってきた。
その前に出張に来たときも台風だった。
「あんたは雨男かと思いよったけんど、進化しちゅうねえ。この台風男!」
「…。」

離陸前のスペースシャトルの主翼のようにも見える大仏の袖の長い服に、マーワーは雨をたたきつけている。
動くことのない大仏の眼は、こんな天候を快く思っていないように見える。
僕のせいじゃない。僕のせいじゃないんだってば。なむなむ。

胎内に入ると、いきなり照明が消えて真っ暗になった。足下に小さな緑のランプだけが灯る。
突然、80年代の残りかすみたいなシンセサイザーのBGMとともに、アナウンスが始まった。
「この部屋は大仏様の胎内に入るにあたり、衆生の日頃の煩悩をなんたらかんたら…」
それから「ようこそ牛久大仏へ」みたいなことを言われて、正面のドアが開いた。
そこからは、なんかサイケデリックな空間を抜けた。
わけがわからないまま、2階に上がり、大仏建造の歴史解説などを見た。
古代の円墳みたいなのがあって、何かと思うと「実物大の大仏様の親指」とのことだった。
確か奈良の大仏にも実物大の鼻の穴とかあったような気がする。
どちらにしろ、「足の指」とか「鼻の穴」とかじゃなくて、例えば大仏様の手のひらとか、もう少しまともな実物大模型があればいいと思う。
そうすれば、「行けキントウン。宇宙の果てを目指すんだー。」とかって孫悟空ごっこもできるし。
エレベーターで最上階まで上ったけれど、着いてみるとどうってことないものだった。
窓がとても小さく、中は普通の鉄筋コンクリートのビルみたいだった。
まるで胎内にいるという実感がわかない。
釈迦の生涯を絵巻のように説明しているものがあった。
でも、この場所で見る必要があるものだとは思えない。
最上階から階段を下りると土産物ショップだった。
大仏ポストカードとか、大仏キーホルダーを販売している。
特に買おうと思うようなものはない。
ところで、当たり前だけど、この土産物ショップにも店員さんがいた。
この近くに住んでいると思われるパートのおねえさんが一人で「いらっしゃいませー」と声をかけてくれる。
こんな地上80mもあるところで、しかも高層ビルじゃなくて巨大仏の中で、回りは何にもない筑波の田舎で、一人で居るのはどんな気分だろう、と僕は思う。
同窓会とかで
「ねえねえ、ルミ。あんた今どこで働いてんの?」
「え、牛久の大仏の中。」
なんて言ったら、ちょっとあたまが???だね。
まるで、UFOでさらわれて、秘密要塞で宇宙人に使われている地球人みたいだ。
「そこのエレベーターから脱出できるわ!」
「きみはどうするんだよ。」
「私はここから決して出られないの。私のことはいいから、早く逃げて!」みたいな感じ。
そんな妄想をしながら、ルミちゃんにエレベーターに乗せてもらって無事外に出る。
帰りに、牛久大仏商店街で牛久大仏招福饅頭をおみやげに買う。
雨は降り止まない。
これ以上ひどくならないうちに早く帰ろうということになる。
でも大仏さんはどこへも動けない。
誰か傘でも差してあげればいいのにね。
たたきつける雨風を赤銅色の体に受けながら、じっとどこかを凝視している。
そこに感じるものは畏怖というよりも、はっきり言って、ただの恐怖だった。

「でけぇー。恐ぇーよー。ぶるぶる。」とごん太の後ろに隠れながら、少しずつ大仏に接近する。
大仏の足下に来ると『ここから見上げると大迫力です。』なんてふざけた看板が立っている。

「早う見ようぜ。いくで。せーの。」とごん太のかけ声で上を向くと、

どどーん
うーんやっぱりでかい。なんかくらくらする…。
でもせっかくだから写真を撮らねばと思い、傘を持って悪戦苦闘している僕を横目に、ごん太は大仏背後の胎内入り口にすたすた進む。
えー。待ってくれよー。
巨大仏の存在を知ったのはだいぶ前のことだ。
昼休みに市民図書館にぶらぶらと行って、「晴れた日は巨大仏を見に」という本を借りた。
中身はどうってことなかったけど、日本に40mを越す大仏・観音があって、全国各地に20体近くあるということを知ってびっくりした。
奈良の大仏はたったの14m。
牛久の大仏は120m。送電線の鉄塔ばりにでかい。

ところで、僕はでかいものが恐い。巨大人工物恐怖症である。
鉄塔とかトンネルとか瀬戸大橋とか立体交差とか観覧車とかカルポートとかをみると、なんか腰のあたりがぞいぞいする。
こんなものが存在していていいのかぁ?、と思う。
だから当然巨大仏も恐い。
にもかかわらず、こんな所までやってきた。
まあ、確たる理由なんてあるわけない。なんとなくである。

(はるかかなたに何かが現れる)
しいて言えば、120mもある仏像なんていうわけのわからないものが、本当に存在しているのかどうか確かめたかったからかな。恐いもの見たさの好奇心だ。

さて、僕が借りた本は「晴れた日は巨大仏を見に」のはずだ。
でも、浄土真宗東本願寺牛久アケィディアに僕らがやってきた8月25日は、関東地方に台風11号、その名も「マーワー」が接近し、テレビのニュースは台風一色の時だった。
そういえば、去年ディズニーシーに来たときにも台風がやってきた。
その前に出張に来たときも台風だった。
「あんたは雨男かと思いよったけんど、進化しちゅうねえ。この台風男!」
「…。」

離陸前のスペースシャトルの主翼のようにも見える大仏の袖の長い服に、マーワーは雨をたたきつけている。
動くことのない大仏の眼は、こんな天候を快く思っていないように見える。
僕のせいじゃない。僕のせいじゃないんだってば。なむなむ。

胎内に入ると、いきなり照明が消えて真っ暗になった。足下に小さな緑のランプだけが灯る。
突然、80年代の残りかすみたいなシンセサイザーのBGMとともに、アナウンスが始まった。
「この部屋は大仏様の胎内に入るにあたり、衆生の日頃の煩悩をなんたらかんたら…」
それから「ようこそ牛久大仏へ」みたいなことを言われて、正面のドアが開いた。
そこからは、なんかサイケデリックな空間を抜けた。
わけがわからないまま、2階に上がり、大仏建造の歴史解説などを見た。
古代の円墳みたいなのがあって、何かと思うと「実物大の大仏様の親指」とのことだった。
確か奈良の大仏にも実物大の鼻の穴とかあったような気がする。
どちらにしろ、「足の指」とか「鼻の穴」とかじゃなくて、例えば大仏様の手のひらとか、もう少しまともな実物大模型があればいいと思う。
そうすれば、「行けキントウン。宇宙の果てを目指すんだー。」とかって孫悟空ごっこもできるし。
エレベーターで最上階まで上ったけれど、着いてみるとどうってことないものだった。
窓がとても小さく、中は普通の鉄筋コンクリートのビルみたいだった。
まるで胎内にいるという実感がわかない。
釈迦の生涯を絵巻のように説明しているものがあった。
でも、この場所で見る必要があるものだとは思えない。
最上階から階段を下りると土産物ショップだった。
大仏ポストカードとか、大仏キーホルダーを販売している。
特に買おうと思うようなものはない。
ところで、当たり前だけど、この土産物ショップにも店員さんがいた。
この近くに住んでいると思われるパートのおねえさんが一人で「いらっしゃいませー」と声をかけてくれる。
こんな地上80mもあるところで、しかも高層ビルじゃなくて巨大仏の中で、回りは何にもない筑波の田舎で、一人で居るのはどんな気分だろう、と僕は思う。
同窓会とかで
「ねえねえ、ルミ。あんた今どこで働いてんの?」
「え、牛久の大仏の中。」
なんて言ったら、ちょっとあたまが???だね。
まるで、UFOでさらわれて、秘密要塞で宇宙人に使われている地球人みたいだ。
「そこのエレベーターから脱出できるわ!」
「きみはどうするんだよ。」
「私はここから決して出られないの。私のことはいいから、早く逃げて!」みたいな感じ。
そんな妄想をしながら、ルミちゃんにエレベーターに乗せてもらって無事外に出る。
帰りに、牛久大仏商店街で牛久大仏招福饅頭をおみやげに買う。
雨は降り止まない。
これ以上ひどくならないうちに早く帰ろうということになる。
でも大仏さんはどこへも動けない。
誰か傘でも差してあげればいいのにね。
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